僕は びりびり と きみ ポイポイ

　最近　きみが　僕の仕事場に来ては　僕の仕事を見て行くね。

僕は集中しているから　きみにかまってあげれなくて　ごめん・・。

でも　仕事場に来ているきみに　伝えていることがあるんだ。

それは　「　音　」。

印章の荒彫り工程で　印刀を彫り動かすと　心地よい　びりびりと音が出る。

その音が出ると　印刀は　具合良く切れ　荒彫りは軽快に進む。

彫り面は俗に　ちりめん　と呼ばれ、その面は　とても　美しい。
　
僕は　僕の父（じいさん）の後ろ姿と　その音を覚えている。

僕が幼い頃に聞いていた音を　今　きみに　伝えているんだ。

その音を　覚えていて欲しい。

その音の意味は　きみが手彫りの技術を持ち　大切にするとき　自然にわかる。

そのときの　きみの姿を　心から望む。


　
　最近　いろんなことができる　きみは　お皿を　ポイポイなげて　割ったらしい。

お母さんは　きみに　「メッ　メッ」。

「お皿は　ご飯を食べるものだから投げては　ダメなんだよ。」

お母さんに怒られて　嫌になったきみは　またお皿を　ポイポイ。

おかあさんは　きみのお尻を　ぺんぺんするわけで・・・。

斜め下を向きながら　タコ口をしているきみ　と　悲しい顔をするお母さん。

僕が　きみのかわりに　お母さんへ「ごめんなさい」したら　きみもまねして　「ごめんなさい」

笑顔になったお母さんは　きみの頭をなでなで。

きみは　ニコニコ顔で　何度もごめんなさいをしていたね。

お母さんの悲しい顔と　きみのふくれっ面はどこへやら。

みんな　ニコニコ　一件落着。

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